ジョルジュの映画感想

どんな映画でも自分の見たことのない世界へと連れて行ってくれる。そんな映画を見て感じたことを書いていきます。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』

 About the film
・原題: Pad Man
・製作: 2018年/インド
・上映時間: 140分
・監督: R.バールキ
・出演: アクシャイ・クマール、ソーナム・カプール、ラーディカー・アープテー

 


映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』予告(12月7日公開)

 

インドに現れた救世主

オープニングはインドの鮮やかで美しい結婚式。花嫁(ガヤトリ)はうつむきがちで暗い表情をしています。そんなガヤトリを喜ばせようと主人公である花婿(ラクシュミ)はインド映画らしい明るく楽しい音楽を背景に奮闘します。こんな旦那さんだったらなあ。と思われる方は少なくないはず。イケメンで奥さんを第一に考えてくれて、村中の人から慕われるラクシュミさん、非の打ちどころがありません。パーフェクトマンです。ここまでのシークエンスは華やかで微笑ましいですね。

ただ、これはロマンティック・コメディではありません。インド中に安価で手に入れやすいパッド(生理用品)を普及させた一人の男、パッドマンの話。歌って踊って、という楽しいミュージカルシーンはわずか。非の打ちどころのないラクシュミさんが村中の人たちから理解を得られず迫害を受ける胸糞悪い場面が多くある骨太なヒューマンドラマだと言えます。

男尊女卑がまだまだ色濃く残っているインドの地域では、女性は生理の5日間は「穢れ」ているとみなされ、家族と寝食を共にすることが許されないそうです。しかも、生理用品は高価で購入することができず、不衛生な布を使用します。そのため、感染症で亡くなる女性も多いそうです。

貧しいながらも常により良い生活が送れるよう工夫するラクシュミは、奥さんが生理時に汚い布を使わないようにするため、自分で生理用品を作り始めます。周囲の女性たちは喜ぶどころか猛反対。彼女たちはラクシュミが生理用品に携わることが「恥」だと言います。女性よりも優位であるはずの男性が女性の「穢れ」である生理について考えること自体が前代未聞であり、タブー視されているからですね。

ただ奥さんに襲いかかる命の危険を取り除きたいだけなのに、村中の人びとだけでなく親族からも奥さんからも異常者扱いされる。とても21世紀だとは信じられないくらいの閉鎖的かつ因循姑息さを見せつけられます。反吐が出ます。そんな世の中を救ったのがラクシュミ改めパッドマンです。彼がどのようにこの世の中で生理用品を生み出し、彼の周りの人びとを変えていったのか。ミュージカル映画としてのインド映画も良いですが、ヒューマンドラマ映画としてのインド映画も素晴らしい!と感じる1本です。

 

みなさん良い一日をお過ごしください!